「猩々」
唐の国揚子の里の近くに住む酒売りが、夢のお告げに従って市に店を出して酒を売ると、店は繁盛した。ある時、酒売りが潯陽の江に出かけると、水中から猩々が現れる。酒売りが持参した酒瓶で猩々と盃を汲み交わすうち、上機嫌になった猩々は、舞を舞って見せると、酒売りに酒壺を与え去って行く。その酒壺は…
能『猩々』を舞踊化したこの作品は、酒に酔った猩々が水上での戯れを見せる猩々舞がみどころです。酒好きの霊獣という愛嬌と品格を備えた松羽目物です。
「口上」
裃姿の俳優が舞台に並び、皆様に八代目中村芝翫、四代目中村橋之助、三代目中村福之助の襲名披露のご挨拶を申し上げる華やかな一幕です。
「熊谷陣屋」
一の谷の合戦後、源氏方の熊谷直実の須磨の陣屋には、熊谷の妻相模が訪れている。陣屋に戻った熊谷は、初陣を飾った息子小次郎の身を案じる相模に、小次郎の様子や平家の公達敦盛の首を討ち取ったことを明かす。すると奥から敦盛の母の藤の方が現れ、熊谷に打ちかかろうとするので、熊谷は立派だった敦盛最期の様子を丁寧に物語る。そこへ、源義経が現れ、敦盛の首実検が始まる。熊谷は、陣屋脇の桜の木の制札を引き抜き、首桶の中の首を義経に見せる。その首は…
『平家物語』の敦盛最期を題材にしたこの作品は、制札の「一枝を伐らば、一指を剪るべし」の文言をモチーフにして、意外な展開となります。わが子を犠牲にした熊谷の悲しみや戦乱の世の儚さが心に深く響く義太夫狂言の名作です。今回は四世中村芝翫が確立した、成駒屋に伝わる芝翫型での上演となります。新芝翫が勤める熊谷をお楽しみください。