神戸市室内合奏団 定期演奏会(第141回定期公演) |
ハイドンのふたつの時代から―― 疾風と怒涛から古典派の確立へ ――
ハイドンが107曲の交響曲を書いたのは1757年頃から1795年までの約38年で、その間ほとんど休まずに書き続けたので、ハイドン自身の様式の変遷を知ることのできる分野であるとともに、作品の成立年代が、18世紀後半の古典派の「交響曲」が確立していく時期とも重なる、音楽史的にも重要で興味深い分野である。
第44番「悲しみ」が書かれたのは1772年。ハイドンのシュトゥルム・ウント・ドラング(疾風と怒涛)時代(1766~73年)の20曲のうちのひとつで、調性も18世紀の交響曲としては珍しい短調の曲である。デュナーミクの範囲がピアニッシモからフォルティッシモまで広がり、クレッシェンドやフォルツァートも用いて変化に富む書き方で、ハイドンが次々と新しい試みに挑んでいく様子が表れている。自身が最も愛した交響曲のひとつと伝えられていて、緩徐楽章を自分の葬儀で演奏してほしいと希望した。
第87番は1785年の作品で、この年から1789年にかけての交響曲において、ハイドンの古典派的な様式――明晰なスタイル、知性や機知に富んだ発想、ユーモアと深い精神性に裏付けられた――が完成した。82番から92番の11曲は、エステルハージ家の楽団のためではなく、パリでの上演を目的として書かれた。1772年以来、ハイドンの作品はフランスで人気があり、常に公開演奏会のステージに登場していて、パリの一流の楽団、コンセール・ド・ラ・ロージュ・オランピックからの注文で書かれた6曲の「パリ交響曲」の一曲が、第87番である。当時ハイドンは、ヨーロッパ中で最も多く楽譜が出版されていた国際的な作曲家で、筆写譜は遠くアメリカまで渡っていたというから、まさに18世紀後半最大の作曲家だった。常に新しい響きを求め続け、創造性が衰えることを知らなかったハイドンのふたつの交響曲が、神戸市室内合奏団へは久々の登場となる鈴木秀美の手でどう蘇るかが、この演奏会の最も注目され、期待を集めるところとなるであろう。
チェロの名手として鳴らしたハイドンの同時代人ボッケリーニが、自分で演奏するために書いたチェロ協奏曲のひとつト長調も、現代のチェロの名手鈴木の独奏で見事に奏でられることだろう。
L. ボッケリーニ /Luigi Boccherini
チェロ協奏曲 ト長調 G.480 /Cello Concerto in G Major, G.480
F. J. ハイドン /Franz Joseph Haydn
交響曲 第44番 ホ短調 Hob.I:44「悲しみ」 /Sinfonia No.44 in
E Major, Hob. I : 44, “Trauersinfonie”
交響曲 第87番 イ長調 Hob.I:87 /Sinfonia No.87 in
A Major, Hob. I : 87
◆指揮及びチェロ独奏◆
鈴木 秀美
Hidemi Suzuki
神戸生まれ。「18世紀オーケストラ」「ラ・プティット・バンド」 等のメンバー及び首席奏者として活躍した。鈴木雅明の主宰する「バッハ・コレギウム・ ジャパン」では創立から2014年まで首席チェロ奏者として、J.S.バッハの全宗教曲の演奏及び録音で通奏低音を務めた。ヨーロッパ各地、オーストラリア、中国、韓国、ベトナム等で演奏する他各地の講習会で講師を務め、94年に新設されたブリュッセル王立音楽院バロック・ チェロ科に教授として招聘され、2000年に日本へ帰国するまで務めた。 91年9月《バッハ/無伴奏チェロ組曲全曲》日本全国ツアーの好評により同年度の村松賞大賞を受賞。99年より2008年まで、水戸芸術館専属の弦楽四重奏団「ミト・デラルコ」としても活動した。
「ガット・サロン」「ガット・ストリーム」等の室内楽シリーズを行うほか、楽遊会(らくゆうかい)弦楽四重奏団としても活動している。
録音では、バロック~初期ロマン派までのソロ・室内楽を多数録音し、数多くの独奏者と通奏低音として共演。95年には日本人としては 初めてのオリジナル楽器による《バッハ/無伴奏チェロ組曲全曲》を録音し (DHM、現ソニー)平成7年度文化庁芸術作品賞を受賞、05年に 新録音をリリース(レコード芸術誌特選)。以降同レーベルで日本人初の専属アーティストとして 《シューベルト/アルペジオーネ・ソナタ》《ベートーヴェン/チェロ作品全集》《ロマンス》(ピアノ小島芳子)などのCDを発表し、《ハイドン/チェロ協奏曲集》では1998年、 第36回レコード・アカデミー賞(協奏曲部門)を、また2000年にはベートーヴェンの初期作品のCDでフランスのディアパゾン金賞を受賞した。平井千絵との「メンデルスゾーン: チェロとピアノのための作品集」で06年文化庁芸術祭優秀賞受賞。08年秋には同じく平井千絵と「ショパン・チェロ作品集」をリリースした。
2001年に古典派を専門とするオーケストラ・リベラ・クラシカを結成、ハイドンを中心としたプログラムで年に2~3回の公演を行い、《アルテ・デラルコ》レーベルよりそのライヴ録音を続々とリリース。同レーベルにはソロや室内楽のほか声楽アンサンブル《ラ・フォンテヴェルデ》の録音も含まれ、既に50タイトルを超える。
指揮活動も活発になりつつあり、オーストラリア、ポーランド、ベトナム等に招かれるほか、日本各地のシンフォニー・オーケストラへの客演指揮・チェロ独奏も好評を博している。山形交響楽団首席客演指揮者。
著書に「『古楽器』よ、さらば!」とその改訂版(音楽之友社)、「ガット・カフェ」、「無伴奏チェロ組曲」(東京書籍)、「通奏低音弾きの言葉では」(アルテス・パブリッシング)がある。
第37回サントリー音楽賞、第10回斎藤秀雄メモリアル基金賞を受賞。東京音楽大学チェロ科客員教授、東京藝術大学古楽科非常勤講師。雑司谷拝鈍亭終身楽長。
©K.Miura
神戸市室内合奏団
Kobe City Chamber Orchestra
1981年、神戸市により設立。実力派の弦楽器奏者たちによって組織され、神戸、大阪、東京、札幌などを中心に、質の高いアンサンブル活動を展開、また管楽器群を加えた室内管弦楽団としての活動も活発で、バロックから近現代までの幅広いレパートリーのほか、埋もれた興味深い作品も意欲的に取り上げてきた。また、定期演奏会以外にもクラシック音楽普及のための様々な公演活動を精力的に行っている。
1998年、巨匠故ゲルハルト・ボッセを音楽監督に迎えてからの14年間で、演奏能力並びに芸術的水準は飛躍的な発展を遂げ、日本を代表する室内合奏団へと成長した。毎年のシーズンプログラムは充実した内容の魅力あふれる選曲で各方面からの注目を集め、説得力ある演奏は高い評価を受けている。
また、2011年9月にはドイツのヴェストファーレンクラシックスからの招聘を受けてドイツ 公演を行い、大成功を収めている。
2013年度からは、日本のアンサンブル界を牽引する岡山潔が音楽監督に就任し、ボッセ前音楽監督の高い理念を引き継ぎ、合奏団のさらなる音
楽的発展を目指して、新たな活動を展開している。
神戸文化ホール プレイガイド TEL 078-351-3349
ローソンチケット (Lコード:54931) TEL 0570-084-005
チケットぴあ (Pコード:337-685) TEL 0570-02-9999
CNプレイガイド TEL 0570-08-9999
イープラス http://eplus.jp
神戸国際会館プレイガイド TEL 078-230-3300