【主催公演】記者会見レポート到着!『流々転々 KOBE 1942-1946』(2026年2月14日-15日)
神戸文化ホール開館50周年記念事業 Creating in Kobe 神戸で創る「人間讃歌」
『流々転々 KOBE 1942-1946』

撮影:kazunari tamura
12月9日に、記者会見を開催!
演出・小野寺修二、鈴木浩介、美弥るりかが創作への思いを語る。
◆小野寺修二(演出)コメント

撮影:kazunari tamura
神戸文化ホールの50周年という節目に声をかけていただいて、本当に光栄に思っています。
僕はこれまでワークショップや作品づくりなど、いろんな形で神戸に関わり、親近感がある街だなと感じてきました。
初めて新開地を歩いたときには、かなり衝撃を受けました。
神戸と聞くと「おしゃれな港町」というイメージが強いと思うんですが、その裏側にある、ちょっとざらっとした「人間の空気」みたいなものがあって。
それが僕にとっては、ベトナムや台湾に行ったときに感じた「人のパワー」に近いものだったんですね。
神戸には、創作の基になるようなエネルギーがずいぶんあるんだなと、その時に思いました。
今回の作品づくりでは、上演台本の山口さんと 1 年前から街を歩き、いろんな声を聞いてリサーチを重ねてきました。
美術の杉山至さんともリサーチワークショップをして、街の構造や、山と海が近い神戸ならではの地形を、身体でどう受け取れるのかを探りながら進めてきました。
トアロードの山から海へまっすぐ伸びる一本の道と、そこに細い路地がごちゃごちゃと絡む感じ。
あれはとても独特で、舞台美術として立ち上げたときにも面白い影響を与える気がしています。
原作の『神戸・続神戸』は、短編が並んだような構造で、時間も視点もバラバラです。
娼婦の話、男女関係、戦時下の空気、外国人への視線......いまの社会で扱うには慎重さが必要な題材も多く、山口さんとも「どう今の観客に届く形にするか」ということをずっと話し合ってきました。
その結果、ただ物語を並べるのではなく、当時の神戸で生きていた人たちの感情や視点を、いまの私たちの感覚とどう結びつけられるか、というテーマが自然に浮かび上がってきた気がします。
戯曲にしていくなかで強く感じたのは、言葉だけで説明しようとすると、こぼれてしまうものがたくさんあるということです。
僕はパントマイムから出発して身体表現で舞台を作ってきた人間なので、山口さんの書いた言葉と、身体で立ち上がるイメージをどう重ね合わせていくか。
言葉を削ぎ落とした時に見えてくるものをどう舞台に残すか。
その可能性を感じながら、いま稽古を進めています。
そして、鈴木浩介さん、美弥るりかさんという魅力的なお二人とご一緒できるのも、とても刺激的です。
すでに稽古を始めていますが、お二人とも対話しながら、それぞれ自分の身体の感覚を丁寧に開いていくような姿勢があって、それが視覚的にも物語的にも豊かなシーンに繋がるだろうという予感があります。
今回の作品で、神戸という街を大きく語るつもりはあまりなくて、僕らが歩いて感じた面白さや、出会った人たちからいただいた言葉、その土地に流れていた空気のようなものが、自然と滲んでくる舞台になればいいなと思っています。
言葉だけでなく、視覚や身体を通して、神戸という場所が持っている「受け取る力」みたいなものを、観客の方が感じ取ってくれたらうれしいです。
ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
◆鈴木浩介(出演)コメント

撮影:kazunari tamura
小野寺さんとご一緒することは、僕にとって本当に長年の夢でした。
カンパニーデラシネラの舞台を拝見して、「いつか同じ現場に立ってみたい」とずっと思ってきたので、神戸文化ホール 50 周年という節目でそれが叶ったことを、心からありがたく感じています。
今年の 2、3 月頃から、まだほとんど白紙の段階で、どういう形があり得るかというところから小野寺さんと、演出助手の藤田さんと話しながら進めてきました。
こんなに長い時間をかけて作品に向き合って、本番が 2 日間・3 ステージというのは僕の中でも初めてで(笑)、贅沢で幸せな時間だなと感じています。
神戸という街には、たくさんのものを失ってきた歴史がありながら、そこで生きる人たちが失ったものを抱えながら前に進むエネルギーを持っていると感じています。
多国籍な人々が集まり、文化が混ざり合ってきた土地でもありますよね。
その「受け入れる強さ」みたいなものが神戸にはあって、今回の作品を神戸でやる意味を僕自身ずっと考えてきました。
そのエネルギーが作品に自然と乗ってくれたら、ここで上演する必然がきっと生まれると思っています。
今回僕が演じるのは、流れに巻き込まれ、流されながら生きていく男です。
タイトルの『流々転々』にもヒントがありますが、この男が東京に限界を感じて神戸にたどり着いたことと、30 年以上演劇を続けてきて、自分の中に足りないものが見えてきた今の自分が、少し重なる部分があると感じています。
だからこそ、神戸で小野寺さんの現場に飛び込み、美弥さんや関西ゆかりの俳優の皆さんと同じ空間に立つことで、自分自身にも何か変化が起きるんじゃないかと、そんな期待を持っています。
美弥さんとは、まだ長い時間ご一緒したわけではないんですが、最初にお会いした時から不思議な空気を纏われている方だなというのが第一印象でした。
言葉ではうまく言えない魅力が、空気越しに伝わってくる方です。
今回の作品を通して、今まで見たことのない美弥さんがきっと舞台上に現れると思いますし、美弥さん自身も、まだ経験したことのない世界を体験されるはずです。
お互いにとって新しい挑戦になる時間を楽しみながら共有していけると嬉しいです。
この作品が、観客の皆さんにとって、観る前と観た後で、神戸の景色が少し変わって見える、そんな体験になれば嬉しいです。
言葉にしにくいけれど、心の奥に何かが残る舞台を目指して、2 月まで全力で向き合っていきます。
◆美弥るりか(出演)コメント

撮影:kazunari tamura 衣装協力:Takemaru
50周年記念公演という節目の作品に出演できるだけでも光栄なのに、小野寺さんの演出、そして鈴木さんとご一緒できるという、こんな素敵な機会をいただけるとは思っていませんでした。
今日こうして記者会見に立って、ようやく実感が湧いてきたところです。
稽古はまだ数回ですが、今まで経験したことのない驚きの連続です。
先日は、2 ページの台本を、朝 10 時半から夕方 5 時近くまで、たった一つの場面だけをずっと掘り下げていく時間がありました。
一歩踏み出す、手を伸ばす、視線の向け方......その一つひとつの中に物語が生まれていくことを感じて、役者として気持ちがまた引き締まりました。
小野寺さんのワークショップも、今まで体験したことのないものでした。
目を閉じて相手に身を委ねて動く、重力を見せずに床から起き上がる、いつくるかわからない瞬間に写真を撮られるように体を差し出す......。
どれも身体と神経を研ぎ澄ませる稽古ばかりで、翌日は全身筋肉痛になるほどでしたが、自分の身体に新しい扉が開くような感覚がありました。
今回演じる波子は、私自身の人生では出会ったことのない女性です。
あの時代に、どんな気持ちで神戸に立っていたのか。
どんな目で人を見ていたのか。
謎が多すぎて、今はとにかく妄想しながら手がかりを探しているところです。
もう一人の絹代にもこれから向き合っていきますが、どちらも私にとって大きな挑戦になると思っています。
鈴木さんは、テレビや舞台でずっと拝見してきた方なので、初めてお会いした時は「本物だ......」というミーハーな気持ちがありました(笑)。
でも、普段はナチュラルで飾らず接してくださる、本当に優しい方なんです。
だからこそ、稽古で演じるスイッチが入った瞬間の変化には、本当に驚きました。
第一声だけで空気が震えるような感覚があって、「今までやってきた芝居は何だったんだろう」と思ってしまうほど、自分の考え方を見直すきっかけをいただきました。
この出会いに、心から感謝しています。
神戸は宝塚歌劇団にいた頃から、私にとって特別な街です。
温かさと哀愁が同時にあるような、独特の空気があって、帰ってくるとホッとする。
今日も三宮を通りながら、「変わっていく部分と変わらない部分が両方あるんだな」と感じ、懐かしいような、幸せな気持ちになりました。
この土地で上演する意味を、観てくださる皆さんにしっかりと感じてもらえるように、2 月までの稽古を一日一日、大切に積み重ねていきたいと思います。
◆山口茜(上演台本)コメント
今回、このご依頼をいただいて小説を読み、実際に神戸市を歩いて回りたいと考えました。
それで、プロデューサーの岡野さんのご紹介で 2025 年 1 月から 3 月にかけてたくさんのキーパーソンとお話をさせていただきました。
気になったお店に飛び込みで入ってお話を聞いたりもしました。
当たり前のことですが、どの町にも、そこに住む方それぞれの、かけがえのない人生があるのだと言うことを改めて思わせていただくことのできた経験でした。
それと同時に神戸という土地は、私の住む京都とはまた違った特色があることを、身をもって知りました。
平坦な道というのはあまりなく、すぐに登ったり降りたりする。
海と山に囲まれたこの街には、六甲おろしという風が吹きます。
そして年間を通して他の地域よりも暖かい。
おそらくこの地形が、住む人に及ぼす影響というのも大きいだろうと考えました。
原作小説は第二次世界大戦下の神戸が舞台となっているお話ですので、当然、戦争についても調べることになりました。
政治に対する心境や社会的な空気、価値観などは、今の私たちが感じるものとは全く違ったはずですが、当時の方々にはそれが普通だったため、小説では取り立ててそのことに言及されることはありません。
また、この小説はドキュメンタリーでありながら、西東三鬼という元医者である男性の目を通したフィクションでもあるということを、私は意識して執筆に取り組んできました。
このように、神戸、戦争、そして西東三鬼の目という三つのキーワードを手掛かりに、今現在、小野寺さんや演出助手の藤田さん、鈴木さん、美弥さんと実際の稽古に入っていますが、私の書いた台本を叩き台にして、そのことをどうやって観客と共有し、感情として体験していただくのか、非常に難しい作業に入っています。
私の望みは、観劇された観客の皆さんが、良い週末だったと感じてくださったり、小説を読んでみたくなったり、神戸を今一度歩いてみたくなったり、人生に少しの気づきを得たりしていただけたらと思うわけで、それは間違いなく座組の皆さん共通の想いだと思いますので、なんとかその境地に辿り着けるよう、皆様の胸をお借りして、引き続き精進してまいります。
どうぞ楽しみにお待ちいただけたらと思います。
◆岡野亜紀子(プロデューサー)コメント

撮影:kazunari tamura
この作品は、いくつもの偶然が重なって必然になった企画だと感じています。
西東三鬼という名前は、神戸に住んでいると自然とどこかで目に入る存在で、ずっと「この人はどんな人なんだろう」と気になっていました。
2021 年に初めて『神戸・続神戸』を読み、戦時下とは思えないほど自由で、さまざまな人が交差していく空気に触れたときに、胸をつかまれるような衝撃がありました。
「この物語が舞台になったらどうなるんだろう」と、ぼんやりとした形で思い始めたのが最初のきっかけです。
その後、神戸文化ホールが 50 周年を迎えることになり、「集大成となる作品をつくろう」という動きが自然に生まれました。
さらに、2028 年にはホールが三宮に移転し、新しく生まれ変わるという大きな節目が控えています。
そうしたタイミングが重なり、「今こそ、神戸発の物語を丁寧に立ち上げるべきだ」という思いが、少しずつ具体的な企画へと形を変えていきました。
小野寺さんに初めてこの企画のお話をした時のことは、いまでも鮮明に覚えています。
「神戸でこんな作品をつくれないか」という段階の、まだ輪郭も曖昧な相談だったのですが、小野寺さんが「面白いかもしれないですね」とすぐに反応してくださって。
「神戸には創作のエネルギーがある」と以前からおっしゃっていたこともあって、その言葉に私自身が背中を押された感覚がありました。
上演台本の山口さんは、今年 1 月から 3 月にかけて、ほとんど毎週神戸を歩いてくださいました。
三鬼が暮らした場所、当時の面影が残る店や坂道、いまの神戸らしさが息づく通り......約 40 か所を、自分の足で確かめながら一つひとつ見て回り、言葉を丁寧に拾ってくださいました。
その積み重ねが台本の随所に息づいており、当時の神戸といまの神戸が自然に重なり合うような世界が、そこから静かに立ち上がってきています。
キャスティングも、本当に「自然にピースが集まってきた」という表現がぴったりでした。
鈴木浩介さん、美弥るりかさんというお二人が決まった時、「ようやくこの物語が動き出したんだ」という確かな手応えがありました。
さらに関西ゆかりの俳優、ダンサーの皆さんや、神戸大学のエキストラも加わり、神戸でつくる意味のある作品としての輪郭が、より力強く浮かび上がってきています。
三鬼が見つめた風景と、戦後の神戸で続いてきた記憶、そして今を生きる私たちの視点が、この作品のなかでどのように交わっていくのか。
観てくださる皆さんが、この舞台をきっかけに、もう一度神戸の街を歩いてみたくなるような、そんな時間になれば嬉しいです。
【公演名】
神戸文化ホール開館50周年記念事業
Creating in Kobe 神戸で創る「人間讃歌」
『流々転々 KOBE 1942-1946』
【公演日】
2026年2月
14日(土)17:00★
15日(日)11:30/15:30★
★・・・アフタートークあり
【会場】
神戸文化ホール 中ホール
▼公演WEBサイトはこちら
https://www.kobe-bunka.jp/hall/schedule/event/theater/15434/






