【主催公演】合同取材会レポート到着!『STILL LIFE-スティル・ライフ-』(2026年6月20日-21日)
2026年4月、神戸文化ホールにて行われた『STILL LIFE-スティル・ライフ-』合同取材会のレポートが到着!
『STILL LIFE -スティル・ライフ-』開幕直前Special 森山未來合同取材会レポート

2026年4月 合同取材会 神戸文化ホールにて
森山:本日はお越しくださいましてありがとうございます。 森山です。
『STILL LIFE -スティル・ライフ-』 は、2024年にブエノスアイレス、神戸、オスロなど複数の都市で滞在制作を重ねながら創作した作品です。神戸では、混声合唱団はもーるKOBEのみなさんにも参加していただき、ワークインプログレスを行いました。そうした創作の積み重ねを経て、今回ようやく日本ツアーとして上演できることをとても嬉しく思っています。
―世界各地での滞在制作は、作品にどのような影響を与えましたか?

これはダンス作品に限らず、現代アートでもよく見られる創作のプロセスですが、アーティスト・イン・レジデンスという、自分の住んでいる土地ではない場所を巡りながら作品を立ち上げていく制作方法があります。知らない土地で新しい風景や人に出会うことで、アイデアが生まれ、作品として形作られていく。そうしたプロセスは以前から自分自身も大切にしてきました。神戸では僕が滞在制作をコーディネートしました。僕にとって神戸は原風景のひとつで、彼らにとっては今まで出会ったことのない新鮮な場所。僕にとっては、彼らのホームであるブエノスアイレスやオスロが新たな出会いになる。アラン、ダニエルとともに、それぞれが異なる土地で刺激を受けながら作品を創っていくプロセスは、とても贅沢で、印象深い経験だったと思います。
―神戸という土地での滞在制作は、作品にどのような影響をもたらしましたか?

2024年KIITOでのクリエーションの様子 ©Manami Inui
様々な土地でクリエーションを重ねながら生まれた作品ですが、だからといって、それぞれの都市の風景や文化が直接的に表れている作品ではないかもしれません。ただ、創作のプロセスそのものは確実に作品に影響しています。ダニエルも僕も、日本の“暗黒舞踏”に強い関心を持っていました。神戸にはDANCE BOXというダンスセンターがあり、そこの主催者でもある舞踏出身の大谷燠さんにもワークショップなどでご協力いただきながら、舞踏についてのリサーチを重ねてきました。そうしたプロセスが、分かりやすく目に見える形ではなくても、作品の土台として確実に繋がっていると思います。また、それぞれの国で地元の合唱団のみなさんにも創作に参加していただきました。単に楽譜を歌うだけではなく、声やブレスを使って“音の風景”をどう立ち上げるかを探っていくような創作で、神戸では混声合唱団はもーるKOBEのみなさんに大きな協力をいただきました。はもーるKOBEのみなさんは、かなりチャレンジングな内容にもとても能動的に関わってくださって、その成果はワークインプログレスを経て、最終的にオスロでの初演にもつながっていきました。この作品における神戸でのクリエーションは、とても大きな意を持っていたと思います。

©Manami Inui

2024年KIITOでのクリエーションの様子 ©Manami Inui
―声やブレスに着目した発想は、どこから生まれたのでしょうか?
そもそも合唱団と一緒に創作するアイデアは、アランから出てきたものでした。彼のお母さんが聖歌隊で歌っていたこともあり、幼い頃から合唱や聖歌に親しんできた原風景が、この作品にもつながっているのだと思います。この作品では、ダニエルと僕による対話やモノローグなど、言葉が非常に多く使われています。言語は情報として直接観客に届きますが、一方で、歌や吐息、ブレスのような“言葉ならざる声”にも強く関心がありました。たとえば、一人の吐息でも、複数人が重なることで全く違う響きや空間が生まれる。それが“音の風景”のように立ち上がってくる感覚があったんです。合唱団とともに創作することで、そうした言葉以前のプリミティブな音や気配が、観客にどのように届くのかを探っていった感覚があります。
―この作品の魅力や特徴を、まだ観ていない方に向けて教えてください。
この作品はテキストを多く使用しているので、観る人によっては演劇的な作品として受け止められるかもしれません。ただ、言葉はあくまで音楽や身体、美術などと並ぶ“素材のひとつ”でもあります。物語をどう解釈するか、その抽象的な世界をどう受け取るかは、観客それぞれに委ねられていると思っています。アランは作品の企画テキストの冒頭で、ランドアーティストのアンディ・ゴールズワージーの「私たちは自然とのつながりを失った時、自分自身とのつながりも失っている」という言葉を引用しています。それは、この作品の核になっているテーマでもあります。人間社会と自然との断絶、そして他者と本当につながれているのかという感覚。2024年に創作した作品ですが、2026年の今だからこそ、より切実に響くテーマになっているのではないかと思います。作中では、ダニエルと僕が対話を続けたり、一方が踊り、一方が語ったりする場面が続きます。誰かとつながろうとしているのに、本当につながれているのかはわからない。その不確かさや孤独感を、言葉や身体表現を通して問い続けている作品なのかもしれません。
―「自然との断絶」というテーマは、各地での滞在制作を通して生まれてきたものなのでしょうか?
アルゼンチン、ノルウェー、日本と、それぞれ社会状況や文化的背景は大きく異なります。ただ、どの場所でも、人々が不安や閉塞感を抱えながら生きている感覚には共通するものがあったように思います。この作品は、そうした時代感覚を見つめながら創作してきた部分があるのかもしれません。また、“自然”という言葉ひとつ取っても、東洋と西洋では捉え方に違いがあると思っています。西洋では自然をコントロールする対象として捉える傾向がありますが、日本には「おのずから在るもの」として自然を受け止める感覚がある。そうした文化的な違いがある中でも、アランが提示している「人間が自然から切り離されている」という感覚は、とても普遍的なテーマとして立ち上がっているのが興味深いと思います。だからこそ、この作品をヨーロッパの観客がどう受け取るのか、そして日本の観客がどう感じるのかにも、とても関心があります。
―舞踏への関心は、この作品にも影響しているのでしょうか?
舞踏は、日本で生まれた表現でありながら、実は明確に定義されていないところがとても興味深いんです。僕が特に関心を持っているのは、「舞踏譜」と呼ばれるものです。西洋のバレエでは、動きを記号化したダンススコアがありますが、土方巽さんらの舞踏譜は、そうした記号ではなく、非常に詩的な言葉で構成されています。その抽象的な言葉を身体の中に取り込みながら、自分の想像力で動きを立ち上げていく。そのプロセスに強く惹かれてきました。それは、言葉と身体の関係性を考えることでもあり、自分自身が俳優や身体表現に関わってきた経験ともつながっているように思います。ダニエルともそうした関心を共有していた中で、「言葉と身体」を強く扱うアランとの創作につながっていきました。アランは、自身のテキストを用いながら、身体と言葉が交錯するような作品を数多く手がけています。この作品にも、そうした関心が強く反映されていると思います。
―世界が非常に不安定な状況になっている中で、芸術表現にはどのような可能性があると思いますか?
ダンスや演劇、現代アートなど、表現には商業的なものもあれば、実験的なものもあります。でも、どちらも大切なものだと思っています。非常時や不安定な時代になると、芸術や表現は「必要なのか」と繰り返し問われます。東日本大震災やコロナ禍でも、そうした議論がありました。けれど、舞台芸術や芸術表現には、人の日常を少し豊かにしたり、支えになったりする力があると思います。また、現代アートには、社会に対して「何かがおかしいのではないか」と問いを投げかける役割もあります。その表現が観る人に届くことで、視点や価値観が少し変わることもある。そうした積み重ねが、コミュニティや社会の豊かさにも繋がっていくのだと思います。一方で、テクノロジーが急速に進化している今だからこそ、人間の身体性や、音楽・身体を通したコミュニケーションの重要性は、むしろ強くなっていくのではないかとも感じています。テクノロジーが発達するほど、私たちは改めて「身体とは何か」を問い直していくことになる。その中で、芸術表現の重要性は今後さらに増していくのではないかと思います。
―海外のアーティストたちは、神戸という街をどのように感じていましたか?
2024年の神戸での滞在制作では、KIITO(注:デザイン・クリエイティブセンター神戸)でクリエーションを行い、僕自身も設立・運営に携わるAiRK(注:Artist in Residence KOBE/神戸・北野を拠点とする滞在制作施設)を拠点に滞在していました。その時にダニエルが話していたことで印象的だったのが、「大切なのは場所そのものではなく、そこで出会った人たちなのだ」という言葉です。KIITOやAiRK、そして、はもーるKOBEのみなさんとの出会いを通して、それぞれにとっての“神戸”が形づくられていったのだと思います。
―アラン=ルシアン・オイエンさん、ダニエル・プロイエットさんそれぞれの魅力を教えてください。
ダニエルとは15年ほど前からの付き合いですが、ダンサーとしての強度が本当に高く、非常に美しい表現をする人です。人間的にもとてもチャーミングで、日々刺激を受けています。一方、アランはとても繊細で柔らかい感性を持った人で、それぞれのアイデアや表現を受け止めながら、作品として編集していく力が非常に印象的でした。小さなアイデアやテキスト、身体表現を積み重ねながら、最後にひとつの作品へと立ち上げていく。その創作プロセスには大きな刺激を受けました。

(c) Mats Bäcker
―ヨーロッパでの上演では、どのような反応がありましたか?
まず印象的だったのは、作品が完成する前の段階から、ベネツィアやアムステルダムなどでの上演が決まっていたことです。それだけアラン=ルシアン・オイエンに対する信頼や期待が、ヨーロッパで非常に高いのだと感じました。また、この作品はテキストを多用しているので演劇的にも見えますが、一方で非常に抽象的で身体的な表現でもあります。そのため、「これはダンス作品なのか」という議論も含め、観客によって様々な受け止め方があったと思います。ただ、アランたちはもともとジャンルにこだわるのではなく、言葉や身体、音楽を横断しながら作品を立ち上げていくスタイルなので、僕自身もその考え方には強く共感しています。ベネツィア・ビエンナーレでの上演は特に印象的でした。建築や現代アートなど、異なる分野の観客も多く来場していたことで、パフォーミングアーツの枠にとどまらない、多様な反応が返ってきたのがとても興味深かったですね。
『STILL LIFE-スティル・ライフ-』

森山未來×世界的振付家が創る、静かなダンスの衝撃
日時:2026年6月20日(土)・21日(日)各日15:00開演(14:00開場)
会場:神戸文化ホール 中ホール
▼公演WEBサイトはこちら
https://www.kobe-bunka.jp/hall/schedule/event/dance/17134/
出演: 森山未來、ダニエル・プロイエット
こどもの城合唱団(横浜)、混声合唱団はもーるKOBE(神戸)、青葉会スペリオル&男声合唱団(静岡)
演出・振付・テキスト:アラン=ルシアン・オイエン
美術・衣裳:アイーダ・ヴァイニエリ、アラン=ルシアン・オイエン
音楽:ヘンリク・スクラム
音響:マティアス・グロンスダル
照明:マーティン・フラック
STILL LIFE Ⓒ 2024 winter guests / Alan Lucien Øyen
上演時間: 約70分(休憩なし)、終演後アフタートーク実施
企画制作・招聘: 神戸文化ホール(指定管理者:公益財団法人 神戸市民文化振興財団)
制作協力: NPO法人DANCE BOX、サンライズプロモーション
ツアースケジュール(チケット発売中)
■ 横浜公演
日程: 2026年6月13日(土) 18:00開演 /14日(日) 15:00開演
会場: 横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール
料金(税込):一般6,500円/U-25・ダンサー割4,000円/高校生以下2,000円/当日券7,000円 ※全席自由、入場整理番号付き
お問合せ:横浜赤レンガ倉庫1号館[公益財団法人横浜市芸術文化振興財団]
045-211-1515(10:00~18:00)
主催: 公益財団法人横浜市芸術文化振興財団
■ 神戸公演
日程: 2026年6月20日(土)・21日(日) 各日15:00開演
会場: 神戸文化ホール 中ホール
料金(税込):一般 5,500 円/神戸割(市内在住・在勤)5,000 円/U25(25 歳以下)2,500 円※未就学児入場不可
公演に関するお問合せ: 神戸文化ホールプレイガイド 078-351-3349(10:00~17:00 月曜定休※祝日の場合翌平日)
チケットに関するお問合せ: サンライズプロモ―ション 0570-00-3337(平日12:00~15:00※土日祝日休)
主催: 神戸文化ホール(指定管理者:公益財団法人神戸市民文化振興財団)
協力: Artist in Residence KOBE(AiRK)
【関連イベント|小さな北欧セレクション】
公演当日の劇場ロビーに北欧の空気を感じるミニ・マーケットが登場。北欧雑貨や焼き菓子、コーヒーなどをご紹介。
初夏の劇場で、北欧の光を感じるひとときを。(出店予定店舗:OKAYU LABO、北の椅子と、ほか)
■ 静岡公演
日程: 2026年6月26日(金) 19:00開演
会場: 静岡県コンベンションアーツセンター グランシップ 中ホール・大地
料金(税込):全席指定 一般6,000円/こども・学生1,000円
お問合せ: グランシップチケットセンター 054-289-9000(10:00~18:00/休館日を除く)
主催: 公益財団法人静岡県文化財団、静岡県
後援: 静岡県教育委員会
企画監修: 宮城聰






